自由研究で「ペルセウス座流星群」の観測をテーマにしようとするとき、やれそうなことを提案します。
本やネットから調べることは簡単ですが、これでは科学的な研究とは言えません。せっかくの夏休みですから、実際に自分で観測をしてそのまとめをしましょう。
まずは、ここまでの「流星の眼視観測」をマスターした上で、そこからもう少し科学的な「研究」にチャレンジしてください。
きちんとした観測・集計などに興味があれば、ぜひ日本流星研究会のHPの「眼視観測マニュアル」をごらんください。
https://www.web-nms.com/
ここから、日本流星研究会→観測支援とたどります。PDF版がどなたでもダウンロードできます。
l 1人、2人、3人以上など人数によって目的がかわる。
l 1日、流星群の時期に連続して、 流星群の時期とそうでない時期に観測
l 観測目的により
流星数、群流星の割合、数の変化、
流星の明るさの分布、変化、群とそうでないものの比較
流星の飛ぶエリア、かたより、時間変化
流星の形状、色、爆発、痕の有無 など
1. 一晩でやれること
a. 8月12日~14日頃、1時間に流星の見えた数を調べ、ペルセウス流星群とそれ以外を区別して記録する。
b.北東の空に向かって天頂からのなるべく広い範囲を見て、東の方に向かって飛ぶ流星、逆に西の方に向かって飛ぶ流星、南の方へ飛ぶものなど、時計の文字盤を思い浮かべてどの方向に飛ぶ流星が多かったかの統計をとる。(真横に東に飛べば3時、左上なら10時のように)
c.飛んだ流星の明るさを、周囲の恒星や惑星の明るさと比べて、流星の明るさ別の数の分布を調べる。
2. 2晩以上の観測を比べる
a. ペルセウス座流星群の極大期と、そうではない、例えば20日過ぎの日の同じ時間に観測をし出現数や時間変化を比較する。
b. 両日とも 1b、1cを実施し、それを比べる。
3 何日かかけて流星の観測をする
a.8月の8日頃から1週間など、できるだけ日数を多くとり、毎晩同じ時間に流星の観測をする。日ごとの出現数の変化をまとめる。
b. 1cと同じく、毎日の流星の明るさの分布を調べ、その変化を比べる。
4 2人で同じ視野を向いて流星の観測をする
a. 2人の結果を比較し、考察をする
5.2人以上で全天を分けるようにして流星の観測をする
a. 合計したものから考察
b. それぞれの結果を比較して考察
6.流星の写真を撮る (専門的にもなるのでここでは略)
a.複数の写真を撮り、その流星の延長から輻射点を決める。
b.流星写真をパソコンに取り込み、ペイント系のソフト(アプリ)を利用して流星の輝度(明るさ)をはかる。
7.その他の機材を利用した流星観測
双眼鏡で見る、高感度での動画撮影、電波観測、その他の観測などがあるが、それぞれの専門の本、サイトで
お勧めは?
1晩より2晩以上、できるならば天気が良い日に5日以上、日にちが多いほどデータも多くなり、変化も分かります。
ただし、天気によっての違いが出ます。雲の多い日、澄んだ快晴の夜など空の条件によることもありますので、それは結果をまとめた後の考察に入れてください。
また、1人ではなく2人以上、友達、兄弟姉妹、お父さんやお母さんと一緒にやると良いでしょう。データが比較できるというのは素晴らしいことです。全天ではいくつだったか、東と西の空ではどれくらい違ったか等が分かります。 また、流星観測ではないのですが、人間の研究にもなります。視力の良いお父さんがが、意外に流星がとらえられなかったり、お母さんは、決めた方角でないところの流星を見たり(これは、見える範囲が広いのか、じっとしておれない性格によるのか)流星の明るさの感じ方が違うことなども分かります。
1つのスマホにみんなの声が同時に入ると分からなくなるので、そこは上手にずらして話してください。
自由研究のまとめ
一般的な自由研究のまとめは次のようです。
1. 題名、氏名
2. 研究の動機
3. 方法、準備 どこで、どのような観測を、何を使って
4. 実施内容 月日、時間 どの方角の空か、何を記録
5. 結果 時間ごとの流星数、ペルセ群、その他
(その他実施内容に応じて)
6. 考察 観測の結果から分かったこと、観測条件
の違いによる変化、過去との比較(*1)
7. 結論 考察を踏まえて総合的にいえること(*2)
8. 今後の課題 よかった事、次回への反省
文だけでなく図や写真などもあるとよい
場所の図、人の配置図、視野の星座図、見た流星の図
(それらの写真もあれば) 出現数の表、グラフ化
1b.方向を示すには時計の図と針の長さで数を表示
(*1) 過去のペルセウス座流星群の出現状況は、たとえば
日本流星研究会のページのリンク集に内山さんがまとめた
「主要流星群 出現状況」があります。
NMS HP https://www.web-nms.comのリンク集より
観測した値を、ここからの値と直接比べるのは難しいですが、大ざっぱなことは得られるでしょう。
ネット上には、いろいろな情報があります。例えばペルセウス流星群がなぜ8月中旬に見えるかなど。自分の考えと比較するなどのため、それを写して書くときには、どこからその情報を得たのかなどを書いておきましょう。
(*2) 結果と結論のちがい
たとえばこういう例から考えましょう。
A~Eの物を磁石につくかどうか調べた。実験結果は、C.Dは磁石についたが、A.B.Eはつかなかった。これが結果ですね。 この実験結果から導かれた結論は、「鉄でできているものは磁石につくが、鉄でできていないものは磁石につかない」。このA.B.Eは鉄ではないC.Dは鉄製という考察をしたからこの結論が出たわけです。
「果物などはアルカリ性食品である」 これをリトマス紙で調べた。 結果は、どれも酸性であった。 そうすると、結論は「果物などはすべて酸性であり、アルカリ性というのは間違いだ」 実験結果から直接結論を出すとこうなります。
ご存じかもしれませんが、この実験だけで結論を出すことは難しく、なぜだろうと調べてみる必要があります。結果からそのまま結論が出せる場合もそうでない場合もあります。考察でほかの意見や考えを調べてそれをもとに自分の結論を出すことも、時には必要です。
「ペルセ群は、13日頃が最も多く、3日ほどすると少なくなる」本にこうやって書いてあったから、自分の観測結果はおかしかったと結論する必要はありません。流星群の極大時期よりほかの時期の方が多かったことはあります。天気の違い、月の影響の違い、時間帯の違いなどなど そういう事も考察してみましょう。
参考になる本など
「今夜、流れ星を見るために」 星空さんぽ編集部 誠文堂新光社 (流れ星を見たことがない人に役立つ本です。ガールズ・スターウォッチング・ブックの1冊ですが、ボーイズでももちろんOK)
「天体観測の教科書 流星観測編」 Martin Beech著 長谷川一郎+十三塾 訳 誠文堂新光社 (日本語での比較的新しい流星観測全般についての本、かなり難しい)
「流星観測ガイドブック」 日本流星研究会編 誠文堂新光社(1974年発行の本ですから50年も前になります。当然新刊本はありませんので古書店で探すしかありません。眼視観測の基本をまとめた本)
参考になるWebサイト
「眼視観測マニュアル」 このページの最初にもあるPDFファイルにまとめたもの。日本流星研究会の作成したものです。
最後に
流星観測は、自然のすばらしさを直接感じることができる体験ができると思います。そんなこともぜひ最後の部分に書いてください。
しかし、深夜に屋外で活動することになります。大人の人と安全が確認できる場所でやってください。
私たちが毎年、同じ流星群を観測しているのは、どんな変化があるのかを知りたいためでもあります。今年だけでなく来年も、その次の年もやっていくと、それは素晴らしい積み重ねになります。自由研究でも今年の結果をもとにまた来年、再来年と積上げていくといいですね。また、夏休みだけでなく、1年中、様々な流星群の活動が見られます。「主な流星群の一覧」にも書かせていただきましたが、違いを見出すのは大きな意義があります。